10年たってオーイエス!千葉に行けるようになったよ

幕張に行った。そこは千葉だった。

私は自分の意思でずっと大嫌いで怖かった地に立ち入り、おまけに2泊も滞在した。

大人になったのかな。大人になったのかも。

時間のおかげなんだろうか。新しい男が夫になったパワーなのだろうか。わからないけど、辛かった記憶は忘れなくても体感した生々しいおぞましさは忘れてきてるっぽい。

もうふた駅も乗れば、あの娘の生まれ育った町だなんて、ずっと暮らしてきて彼女にコンフォートと郷愁を惜しみなく与えるであろう土地だなんて。

信じられない。

そんな完全に彼女の陣地に自分から足を踏み入れるなんて私ってすごすぎる。

 

前の夫が私の元イマジナリーフレンドに会いに千葉駅まで胸わくわく股間むくむくさせて出発したのは、もうだいたい10年も前。私はその事実が嫌すぎて、本人は「友達」として「友達」として会いにいくのに、いかがわしい想像で頭をいっぱいにして嫉妬をしてくる私はなんていやらしくてみにくいんだ!と怒って、私の頭をげんこつで殴った。

痛え!て、おいちょっと待てよ。あたいはばかだけどそこまでばかでもないよ。おめえはイマジナリーガールフレンドを獲得する直前だと信じてやまず、ハヤる気持ちを抑えられなかったじゃねえか。全部はみ出てんだよ。全部にじみ出てんだよ。

自分の配偶者が、よその異性、それも自分が初めてインターネッツで仲良くなった日本人の女の子と私抜きでデートするとか言って、それをおっけーおっけーいってらっしゃい!と笑顔で送り出せる女なんてこの世に存在するのかな。

私は辛くて辛くてふて寝を決め込んでたけど、その事実にどんどん心が殺されそうになってきて、今この時、この瞬間に、新しい恋が始まるだろうことに発狂するしかない気持ちで、何を思ったか、横浜のアウトレット(新杉田からモノレールに乗っていく)に出発してしまった。

その年のお正月、彼と一緒に渋谷のトゥモローランドで一緒に見たひとめぼれしたフライドポテト柄のストールは定価で4万円くらいして買えなかった。今思えば彼はエクスペディアの広告部門シニアソフトウエアエンジニーアだったんだから全然買えたはずだけど、私の金銭感覚は家の仕事を手伝って獲る月五万生活プラスおばあちゃんがまだくれる月一万のお小遣いでやりくりしてた時代のままだったから、そんな首巻きなんかにそんな値段出せなかった。

彼に彼女のことを告白れる前日だろうか。御殿場の友達に私は会いに行き待ち合わせ場所であったアウトレットでそれの他の柄のシェイク柄やハンバーガー柄の物が安く売られているのを見つけてしまった。

フライドポテト柄はなかった。でも、ふと新杉田のアウトレットにあるかもしれないと思った。ないかもしれないけど、もしあったら、私は多分生き残る。私は多分この苦難に負けないはずと謎に思い込み、フラフラのまま京浜東北線に飛び乗った。

すごい道中だった。途中で中学生のアイドルの卵みたいなかわいい女の子たちが乗ってきた。一人、また一人と降りて行き、一番素敵な女の子が座席に一人になった。すると、すごいすごい。全く混んでいない車内で大人の男たちが不自然に彼女の前に立って吊り革ぶらぶらさせたり隣に座って寝たふりをして彼女にもたれかかったりし始めた。私は顎変形症(顎関節症ですらない)であまり開かないはずの元からとってもおちょぼ口の口をぽかんと開けてずっと見ていた。

女の子は自分の魅力に気づいているらしく、自分から挑発してるのでは?という節もあった。寝たふりの大人の男にまんざらでもないのか自分も寝たふりでその男にもたれかかり、まるでドラマ高校教師の最終回の最後のシーンみたいになってた。小指と小指に赤い糸が結ばれてるのかと思ったよね。

新杉田は想像よりすんごく遠くて、モノレールに乗った時にはもう日暮れていた。11月の20日頃だったし。乗り換える時、都内ではあんまり見なくなっていたシュークリームのヒロタを見つけて、あ!ヒロタだ!と思ったのを覚えている。

ねるとん紅鯨団の呪録でもされてたかのような、風間トオルが肩からセーターを下げてポーズを取ったかのような、取ってつけたかのようなマリーナ風情漂う寂れた小さなアウトレットに着いて、心はさらに暗くなった。

一目散にトゥモローランドに駆け込むも、フライドポテト柄はなかった。あるのは同じシリーズのショッキングピンクのシルクのスカーフ、柄はナイフ柄のだけだった。

あははは、うふふふ、せっかくこんな僻地まで来たのに、私ってばか。売ってないってことは私の今後は負け一本。

辛い気持ちで、イギリスのお茶やお菓子を売っているお店で、成城石井では高すぎて手が出ないチャールズ皇太子(当時)がやってるオーガニックのビスケット屋のビスケット一箱だけ買う。

 

と、まあ千葉がそんなこんなで無理になってしまって、この10年ずっとふなっしーに中指立てたい気持ちで生きてきたのです。

だから自分から千葉に行ったのが自分としては感無量で涙が出ちゃうんです。

 

 

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